2009/12/10

 
『砂漠で歌う女』

先日、24歳のアフガニスタン女性が撮ったドキュメンタリー映画『A woman sings in desert(砂漠で歌う女)』を見た。戦闘、テロが続き、絶望的な貧困があふれるカブールで、ナン屋を営み、たくましく生きる女性たちの映画だった。

アフガニスタンは戒律の厳しい国。女性がひとりで道を歩くこともままならない。そんな中、あるNGOが始めた小額ローンを得て、女性たちで協力してナンを焼き、息子を連れて町に売りに行く。彼女たちの中には、地雷を踏んで足を失った夫を持つ女性も、知的障害の息子を3人も抱える女性もいる。おそらく世界でも最も過酷な状況に身をおく女性たちだろう。

しかし、ある一人の女性は言った。
「私は泣いて、自分を憐れんでいるばかりの女じゃないの。神様を信じて、がんばるの。」
また、ある女性はこう言う。
「ローンが借りれてナン屋ができて、ほんとうに幸せ。家族といられてほんとうに幸せ。」

日本や欧米のメディアに映るアフガニスタンの女性はブルカにすっぽりと覆われていて、彼女たちの表情も生き方もまったく見えないけれど、そのベールの下には、やはりたくましい生きる力がみなぎっていた。

まったくの独断だが、私は常々「世界はおばさんの力で回っている」と思っている。あちらこちらに旅をしてきたが、その先々で笑顔を向けてくれて、道を教えてくれて、困っていたら小銭も貸してくれて、ご飯を食べさせてくれて、見ず知らずの旅人の私にやさしくしてくれたのは、元気なおばさんたちだったから。この世からもしもおばさんたちがいなくなったら、きっと途方にくれる人が続出して、世界は機能不全になってしまうのではないかと、本気で思っている。

アフガニスタンで女性が映画監督となるのは、ほんとうに大変なこと。その危険をおかしてまで、このドキュメンタリー映画を製作して、アフガニスタンの元気なおばさんたちを見せてくれたアルカ・サダット監督に心からお礼を言いたい。

いつかアフガニスタンが平和になったら、あの元気なおばさんたちに会いにいこう。
そんな気持ちにさせてくれた映画だった。

2009/12/03

 
オバマ大統領のアフガン新戦略を聞いて

アメリカ時間12月1日のアフガン新戦略に関する米大統領演説。ネット動画で見ました。全文も読みました。18ヶ月後にはようやく米軍をアフガニスタンから撤退させるという方針に、「やっと撤退が見えてきた」との思いもわきましたが、同時に来年には3万人の兵士を増派するとの発表に複雑な気分です。

オバマ大統領就任時には3万人だった兵力が、来年には10万人規模に。それがどんな結果をもたらすのか。。。願わくば増派される兵士たちが、掃討作戦要員ではなく、アフガン軍や警察の訓練要員でありますように。そして、米軍はプレゼンスを発揮するだけで、治安の維持活動は各部族の長老の指揮にまかせるようにすれば、さらなる戦闘や被害を最小限に食い止めることができるのでは。。。、とあれこれと思い巡らせてしまいます。

オバマ大統領は演説の最初の方で、911後に見られた世界の結束とアフガン攻撃への支持に言及し、このアフガン戦争の始まりは正しかったとの見解を改めて人々に思い出させようとしていたようですが、ブッシュと同じ言説に、私としては辟易させられました。

この戦争は最初から間違っていたのです。本当は世界中の国々の結束のもと警察力と諜報活動で犯人を突き止め、逮捕し、裁判にかけ、そしてテロのネットワークを壊滅するべきだったのです。いくらオバマ大統領がその正当性を荘厳に語ろうとも、これまで8年間のアフガニスタンでの戦争で、米軍および同盟軍(日本の給油活動も含めて)が罪もない村人や子どもを何千人も何万人も殺した事実を、誤魔化すことはできません。

ベトナム戦争に反対したキング牧師が、アメリカに語りかけた言葉を思い出しました。
Repent - 悔い改めよ。

自らの間違いを悔い改めた時、本当にするべきことが見えるのものなのではないでしょうか。オバマ大統領を最高司令官とする10万人の米軍が悔い改めて、本当にするべきこと---アフガニスタンの人々のために活動してくれることを願わずにはいられません。

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