2012/11/18

 

国民のための政治を取り戻すために



11月16日の突然の衆議院解散の直前、小選挙区の一票の格差を是正する「0増5減」関連法が可決、成立した。膨らみ続ける国の赤字対策のために、「自ら身を切る」という掛け声のもと、国会議員の数を減らすという方向に進んでいるようだが、果たしてそれが国民にとって良いことなのだろうか?


本来、国会議員は私達の意見を国政に反映させる私達の代表のはず。その数を減らすとますます私達の声が国会に届かなくなるではないか?歳出削減のためならば、国会議員の数を減らさず、国会議員一人当たりにかかる歳費を減らせば良いのではないだろうか?同じ議員内閣制のイギリスと比べても、日本の国会議員一人当たりの歳費はイギリスのおよそ2倍*1。今の歳費をイギリス並にして、1票の格差がなくなるまで議員定数を増やせば良いのではないだろうか?



それに伴って、各国との比較でも群を抜いて高額な地方議員の歳費も是正されるだろう。特に県議会議員レベルでは議員ひとりあたりの歳費は2千万円を越えているが、これもアメリカの州議会議員で400万円、ドイツで600万円の他は、ボランティアで無報酬という国もあり、またイギリスやフランスでも数十万円単位であることを考えれば*2、歳費の半減だけではなく、制度から抜本的に改革する必要もあるように思われる。



話が少しずれるかもしれないが、国会議員、地方議員の報酬が削減されれば、国家公務員、地方公務員の報酬削減も避けては通れない問題となるだろう。ただし、私が提言したいのは、報酬削減に伴う、議員、公務員の増員だ。最初に述べたとおり、議員は私達の声を政治に反映させるための代表者だ。現代社会は多様で、問題も複雑だ。ひとりの議員に多くの議題を託すのはもう無理だろう。多様な意見を反映するだけの人員が必要だ。また同様に公務員も報酬削減に伴って増員し、多くの問題を抱える医療、保育、教育、地域サービスの向上に、公務員ひとりひとりが力を注げる環境を創りあげる必要があるだろう。



次に、私達の声を国政に反映させる国会議員を多く誕生させるには、立候補に伴う供託金の見直しが必要だ。これも日本の場合、小選挙区に立候補するにも300万円の供託金が必要となる。その上、有効投票総数の10分の1以上を獲得していない場合は没収となる。各国と比較してみよう。イギリスは9万円、カナダで7万円、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどは供託金制度そのものがない。*3 300万円の供託金となると一般庶民は立候補したくてもかなり難しい。これは国民に平等にあるはずの被選挙権を妨害している制度とも言えるのではないだろうか?国民のための政治を取り戻すために、供託金の廃止をも含んだ検討が必要だ。



最後に政党助成金と企業による政治献金について述べたい。2010年の国会図書館の調査によると日本の政党助成金の総額は319億円を超えており、そのほとんどが民主党(171億円)、自民党(102億円)へ支給されている。これもドイツの174億円の2倍近くの額であり検討が必要とされる。ただ、制度自体は存在意義があると私は考えている。その理由は、アメリカには政党助成金の制度がないことだ。アメリカでは選挙に巨額の資金が必要とされ、その選挙資金を賄えるかどうかが勝敗を決めるとも言われているが、その資金集めのために大企業からの政治献金が必要となり、アメリカの政治が国民よりも企業の声を聞くようなものとなってしまったことを考えると、この政党助成金は意味がある制度だと言えるのではないかと思う。問題は、政党助成金が、国民の多様な意見を反映させるに必要な新政党、小政党の育成のためではなく、大政党に重点的に配分されていること、そしてこれほど巨額の税金を支給されていながら、大企業からの政治献金も受け取り、その意向に沿った政策の実現にやっきになっている大政党の姿勢だ



経団連を代表とする企業の政治への影響力は近年増大している。昨年当ブログでも書かせてもらったが*4、2003年以降、日本経団連が、企業からの献金を政党に割り振るのではなく、政党の政策を評価して、それに基づき資金の斡旋をするというやり方を取っていることにより、どの政党の耳も経団連の発言に向き、経団連のための政策が行われるという状態を生み出した。つまり、国民ではなく、資本を持っている者が支配する社会だ。

これは民主主義ではない。お金で政治が買われるような社会、そんなもののために私は税金を払っているのではない。政治を私達国民の手に取り戻さなくてはならない。そのためには、企業からの政党への献金の禁止は必要不可欠だ。



おわりに
今回、この日本の政治を取り巻く制度が、いかに民主主義的ではないかを認識し、その是正を求めていくことがまず第一歩だと思い、私論を述べさせてもらいました。まだまだ熟慮の必要な点も多々ありますが、ひとつの見解として参考にしていただければ光栄です。





参考サイト

*1 国会議員の給料(歳費)を各国で比較
http://matome.naver.jp/odai/2131739964131468401

*2 構想日本資料
http://www.kosonippon.org/temp/060925gikai.pdf 

*3 wikipedia-供託金 参照
 & “憲法違反の政党助成金 世界一高い日本”
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-08-15/2010081501_01_1.html

*4 Words for Peace 『キャピタリズム』:資本主義と日本
http://flowersandbombs.blogspot.jp/2011_10_01_archive.html

2012/11/02

 

福島に生きる方たちのお話を聞いて



先週末(10月27日28日)、現在も福島県で生活をされている方たちのお話を聞きました。

おひとりは、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表の佐藤幸子さん。
4人のお子さんをお持ちのお母さんでもあり、3.11以降、子どもたちの命や健康よりも経済を優先する国、行政、学界、経済界に直接訴えかけ、子どもたちを守るためにできることはどんなことでも実践されてきた方です。

その佐藤さんが今回最も切実に、そして希望を込めてお話されたこと、それは子どもたちの命と健康を守るために福島に診療所を建設しようという取り組みでした。現在の福島県では、子どもたちはガラスバッジをつけて生活しています。そのバッジによって積算放射線量は測れるようですが、保護者の方たちに届けられる報告は具体的な数値ではなく、「大丈夫です」と言ったようなコメントのみだということです。これではまったく自分達で判断できません。

また、報道によると、8月末現在で8万174人の子どもが甲状腺検査を受け、このうち3万2003人に結節やのう胞が認められました。しかし、約99%が大きさから「通常の診療でも異常や治療を要する所見とはされていない」として14年度以降の検査まで経過観察とされたとのことです。この「2年間の経過観察」というのも、保護者の方たちにとっては納得のいかないものでしょう。 また、ご存知の方も多いと思いますが、3.11以降に福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとなり、また福島県立医大副学長に就任した山下俊一氏は、「ミスター100mSv」と呼ばれるほど放射線被曝の危険性を過小評価する学説を支持する学者ですが、県や市も山下氏の指導に沿って、「年間100mSv以下は大丈夫です」以外の情報を流すつもりはないとのことです(佐藤さんが、福島市の広報担当者に確認したそうです)。これでは、県の行政にも医師にも、県民は不信感でいっぱいになるでしょう。


そこで、自分達で建設しよう!と立ち上げられたのが「福島診療所建設委員会」です。佐藤さんは訴えます「多くの子どもたちは、今なお福島に留まり生活をしています。その子どもたち、不安をかけて日々の生活を余儀なくされているお母さんたちに、日ごろから相談になって乗ってもらえる主治医が必要です。それは、病気が出てから治療するのではなく、病気にならないための予防をするための診療所が必要です。」住民の要求に応えられる診療所を住民自らの手で!子どもを守る診療所を自らの建設しよう!その福島の人々の切実な思いと行動・・・、私も微力ながらお手伝いをさせてもらいたいと強く思いました。


- 関連サイト -
福島診療所建設委員会
http://www.clinic-fukushima.jp/





翌日、南相馬市のお寺のご住職でいらっしゃる田中徳雲さんのお話を聞きました。ご住職と言ってもまだ38歳の青年で、4人の子どもの父親でもいらっしゃいます。田中さんは3.11以前から原子力発電の学習会などに参加していたことから、3月11日の午後、原子炉が冷却できなくなったようだとの情報を得るや否や、子どもたちを連れて、南相馬市から、福島市へ、また翌日には会津、3号機爆発時には長野、その後福井県へと避難を続けられたそうです。ご家族はそのまま福井県で生活を続けていらっしゃるそうですが、ご自身は、お寺を守り、檀家さんたちの要望に応えるためにも南相馬に戻られています。



檀家さんたちの多くは農家の方たちで、今回の事故によって生活の基盤、生きがいを根こそぎ奪い取られてしまった・・・。「よく『今、必要とするものは何ですか?』と聞かれるのですが、今、福島に必要なものは希望なんです。」と田中さん。そして、田中さんがこれからの福島の希望の柱になると思われているプロジェクトをご紹介くださいました。

それは、森の防潮堤プロジェクト。震災ガレキを使い、海岸沿いにマウンドを作り、そこに樹を植え森を作り、防潮堤にしようというプロジェクトです。「今、国や行政は海にコンクリートの防潮堤を建設しているが、あんなものは津波には勝てない。それに数十年でボロボロになるだろう。でも、森の防潮堤は時がたてばますます強くなる。100年後、200年後にまた同じような津波がこの地域を襲うかもしれない。でも、その時に森の防潮堤は、人々を守ってくれるだろう。『昔の人はよくこれを造ってくれた』と思ってもらいたい。」と田中さん。

しかし、「廃棄物は焼却処理」と定める「廃棄物処理法」が壁になり、一時は宮城県議会全会一致で進めようとしたこのプロジェクトも行き詰っているそうです。「この行き詰まりを打破するためには、多くの人の声が必要です。福島、宮城・・・津波に襲われたこの地域だけでも特区として、震災ガレキを活用して森の防潮堤を造らせてもらえるよう、関西からも応援してください」と訴えられました。



大好きな土から離されて暮らしている田中さんの檀家さんの農家の皆さんが、未来の世代のためにと、森を育てる仕事に取り組めたら・・・。森の防潮堤・・・想像してみてください。



- 田中さんがご紹介してくれた動画 -

「いのちを守る森づくり」
http://www.youtube.com/watch?v=1VQyN-cMrvE


- 関連サイト -
森の長城プロジェクト-ガレキを活かす-
http://greatforestwall.com/








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