2015/12/23

 

安定ヨウ素剤ってなあに? -原発事故!そのとき家族をどう守るのか?-



さよなら原発神戸アクション主催で、私も企画・運営に携わっております「放射能社会を生きる連続セミナー」の第8回、「安定ヨウ素剤ってなあに?-原発事故!そのとき家族をどう守るのか?-」が、11月29日に神戸・三宮の勤労会館にて開催されました。
原発から30キロ圏外で唯一「安定ヨウ素剤」の備蓄を完了し、事前配布に向けて動いている兵庫県篠山市の取り組みを学び、もしも原発事故が起きたらどのように行動するのかを、皆でシミュレーションするという会でしたが、311の原発事故を受けて、関西に避難されている方も多数ご参加いただき、とても有意義な意見交換の場となりました。会の様子を簡単に紹介させていただきます。


第1部 篠山市原子力災害対策検討委員の玉山ともよさんのお話

玉山ともよさんは、元々はアメリカのウラン採掘現場となる先住民の居留地の調査をフィールドワークされている研究員で、被ばくによる健康被害などの実態などを直に見てこられた方でした。
日本でも原発事故が起き、また篠山市から50キロほどしか離れていない若狭湾の原発が再稼働されるかも・・・と危機感が高まる中、防災計画の一環として篠山市が2012年に立ち上げた原子力災害対策検討委員会に市民委員として参加され、行政、専門家、医師、消防団、市民が一緒になって会合を重ね、篠山市民を原子力災害から守るためには、何ができるかを検討、提言されてきました。

その様々な取り組みの中に、メディア*などでも注目された「安定ヨウ素剤」の防災計画があります。原発事故により放出された放射性ヨウ素を体内に取り込むと甲状腺に蓄積され、甲状腺ガンになる確率が高まるとされていますが、この安定ヨウ素剤を事前に服用しておけば、甲状腺に蓄積されることを防げるとのことで、特に被ばくに感受性の高い子どもたちには、その服用は重要です。篠山市は、2015年3月に市民など5万人を対象に安定ヨウ素剤の備蓄を完了。2016年3月までに、希望する市民への事前配布に向けて、住民学習会などを通して、その重要性を市民に認識してもらう指導を続けています。

さて、神戸市や他の自治体の原子力防災の取り組みはいかがでしょうか?さよなら原発神戸アクションや同じような取り組みをする団体が、兵庫県下の自治体の危機管理室などに陳情に行くことがありますが、「国の方針が決まらない」とか「屋内退避で十分」など、事故の当事者になるかもという姿勢がまったく感じられないことが多く、たいへん失望することが多いです。その様な中、「市民の命と生活を守る」という篠山市の皆さんの熱い取り組みには、ほんとうに感激させられます。

玉山さんのお話では、このような取り組みも最初はひとりの篠山市の職員の「自分の町を守りたい」という思いからだったとのこと。たまたま防災担当だった職員さんが、玉山さんのお知り合いだったということで、原子力防災について何ができるのか相談を受け、玉山さんが専門家などを紹介したことが、この篠山市原子力災害対策検討委員会の発足に繋がったそうです。やはりきっかけはひとりの熱い思いから・・・。それがどんどん拡がって、篠山市へ、そして私たち神戸市民の耳にも届き、また日本全国に届いていく・・・。ひとりでも「動く」ということの大切さを、ひしひしと感じさせられました。



*関連報道 神戸新聞NEXT 2015/9/26
■篠山市、ヨウ素剤配布で方針 医療関係者向けに研修会開催
http://www.kobe-np.co.jp/news/tanba/201509/0008429473.shtml


=篠山市原子力災害対策検討委員会・関連リンク=
■篠山市原子力災害対策検討委員会については、下記リンクに詳しく紹介されていますので、ご覧ください。
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/post-11.html

■また、篠山市原子力災害対策検討委員会から市長に提出された
「原子力災害対策にむけての提言」も、下記リンクよりご覧いただけます。
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/cat4/post-118.html

■「原発からの命の守り方」守田敏也著 海象社 2015年刊
篠山市原子力災害対策検討委員でもあるジャーナリストの守田敏也さんの著作です。
セミナーでも紹介させてもらいましたが、安定ヨウ素剤はネット通販でも入手できますが、
昆布だしでも対応可能など、とても役に立つ情報が満載です。
「安定ヨウ素剤は、普通の大人が飲む量でも100ミリグラムです。だし昆布に入っている寮が、味噌汁1杯5ミリグラムくらいであり、20杯で100ミリグラムです。子どもだったら、10杯分です。(中略)ですから、これを飲めばいいです。」(p.200)
ただ、乾燥昆布は食べないでくださいね。ひどいときは腸閉塞になるそうです^^;


=安定ヨウ素剤について=
■緊急被ばく医療研修 安定ヨウ素剤取扱いマニュアル
http://www.remnet.jp/lecture/b03_03/1-3.html

■「100キロ圏でヨウ素剤が必要」 ベルギー、福島事故で配布地域を拡大か
 (産経新聞 2015.3.12)
 http://www.sankei.com/world/news/150312/wor1503120007-n1.html
 ベルギー政府の諮問機関、保健高等審議会は11日までに甲状腺被ばく防護策に関する報告を発表し、原発事故の際、100キロ圏で子どもや妊婦に安定ヨウ素剤を緊急配布できるよう備える必要があると勧告した。同国では現在、安定ヨウ素剤を原発の20キロ圏内の家庭などに事前配布している。

■【欧州の視座で考える3.11】RONZA 川崎陽子
(4) 原発事故を想定した安定ヨウ素剤の備えを問う
http://webronza.asahi.com/global/articles/2913030500002.html




ちょっと休憩 
グループに分かれてシミュレーション




第2部 パーソナル・シミュレーション

上記リンクでご紹介しました、篠山市原子力災害対策検討委員会から市長に提出された
「原子力災害対策にむけての提言」を読むと、原子力災害時は「とっとと逃げる」が基本と書かれています。まさに、「放射性物質から逃げる」ことが肝心。そのためにはいざという時にどのように行動するのか、ひとりひとりがシミュレーションをすることが大切とも提言されていたので、第2部は、それぞれ関心のあるグループに分かれて、話し合いながら、シミュレーションを行ってもらい、発表してもらいました。

グループ分けは5つ。
1 子ども(学童)を連れて逃げる場合
2 介護が必要な家族を連れて逃げる場合
3 留まって屋内待避する場合
4 通勤・通学時に事故が起きた場合
5 安定ヨウ素剤をしっかり服用するには


それぞれのグループには10人前後の人たちが集まり、20分以上話し合ってもらいました。その後の発表で出された意見を少しご紹介させていただきます。

子どもを連れて逃げるグループは、やはり「子どもを被ばくから守りたい」という切実な思いが伝わってきました。311事故の時に、適切な情報が得られなかったことから、海外(または外資系企業)から情報を得るようにする、海外にも逃げれるようにパスポートは切らさない。また、ビザなしでも渡航できる国を確認しておくといった、私も参考にさせてもらいたい具体的な情報を発表してくださいました。

次の介護が必要な家族を連れて逃げるグループは、ガソリンは常に満タンにしておくなどの対策も発表されましたが、考えれば考えるほど、「そもそも介護の人を連れて逃げるのは難しい」と気づくとのことでした。また、「覚えておくことは、逃げた先で行政に泣きつく」と提言してくださいました。確かに、医療支援などを得るには、最初は行政に頼るのが確実でしょうね。

グループ3,4の留まって放射性物質を避けるグループから聞かれた声は、「まずどこに逃げたらいいのかわからない」「情報の適切な発表はあるのだろうか?」とりあえず、「食料・水・電源などを確保して、窓にはテープで目張りで対処する」「外出時の家族の所在確認」などでした。やはり、311の事故時に適切な情報がなかなか得られなかったことで、不安が強いですね。


最後の安定ヨウ素剤の服用について考えたグループは、主に服用のタイミングについて話し合ったようで、やはり「適切な情報は得られのか?」というのが大きな問題となったそうです。「政府はきちんと発表しないかもしれないので、原発所在地に大きな地震があった時には、安定ヨウ素剤を飲むということを徹底する必要があるのでは?」との発表でした。こちらのグループには関東から避難して来られた方が多く参加されていたので、その危機感には、私たちも学ぶところが多いと強く感じました。


最後に、このセミナーに参加された皆さんから、行政への要望をまとめます。

・的確な放射性物質拡散情報を市民が得られるように、モニタリングポストの増設、またそれが無理でも、現在の県内にある6カ所のモニタリングポストの情報*をwebサイトなどで、リアルタイムの情報を、いつでも見られるようにして欲しい。
*現在は週単位の情報しか見られない→兵庫県における環境放射能測定結果
http://www.kankyo.pref.hyogo.jp/JPN/apr/topics/kankyo-hoshano/index.html

・市民の安全を担う危機管理室や、子どもの安全・健康に大きく関わる教育委員会などに、もっと原子力災害や放射性物質への被ばくに関して危機感を持ってもらいたい。

・原子力防災について、行政ができることのひとつとして、安定ヨウ素剤の配布が考えられる。ぜひ篠山市の取り組みに学んで欲しい。


セミナーで出された原子力災害への不安の声、対策への要望を、さよなら原発神戸アクションとして、神戸市の危機管理室などに伝えていきたいと思っております。また、具体的なアクションの結果があり次第、当ブログなどでご紹介いたしますね。


【後記】
原発事故が起きたら・・・なんとか被ばくせずに家族を守り、放射性物質から逃げ切れたとしても、私たちの街は以前の街とは違っている。汚されてしまった街に帰ったとしても、帰らなかったとしても、私たちはこれまでの暮らしを失ってしまうのです。
「重大事故は起こらない」と言われて、これまで54基もこの小さな島国に原発を建ててきた私たち。今は「重大事故が起きるかもしれない」と言われて、原発を再稼働させられる。。。私たちの命と暮らしは、電力会社の利益や、それに関連する銀行や企業の利益よりも、軽いものなのでしょうか?

安定ヨウ素剤を飲んで逃げる・・・それは、最悪のシナリオの最初の1ページにしか過ぎない・・・。私たちは、自分の命と暮らしを守るために、もっともっと本気で声を上げないといけないと思います。


【後記2】
実は、このセミナーにMBSのディレクターさんが出席してくださっていたのですが、後日も取材を重ね、特集を組んで篠山市の取り組みを紹介してくださいました。
子どもたちを守るための取り組みが、番組を通して広く知られ、行動が広まることを願います。
番組はこちらからご覧いただけます↓
原発事故から子どもたちをどう守る?篠山市がヨウ素剤を事前配布
MBS「ちちんぷいぷい」石田ジャーナル2016年2月17日放送
http://dai.ly/x3smqqd



【後記3】
お約束していた、原子力防災取り組みへの推進を自治体に申し入れを、2016年3月10日に行いました。詳細は、下記ブログをご覧ください。
■原子力防災の推進を兵庫県に申し入れました
http://flowersandbombs.blogspot.jp/2016_03_01_archive.html




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